平成30年 電気設備及び機器 問題9(3)

変圧器
UnsplashMika Baumeisterが撮影した写真

並列に接続した変圧器2台の並行運転時と、単独運転した場合の損失を比較する問題。

  • 難易度 ★★★★☆
  • 重要度 ★★★★★

負荷の皮相電力を求める

問題文より負荷の消費電力(有効電力)と力率が分かっているため、そのまま皮相電力を求めるだけでよい。

\begin{eqnarray}
P&=& Scosθ \\
S&=& \frac{P}{cosθ} \\
&=& \frac{300}{0.87} \\
&=& 344.827 ≒ 345[kVA] \\
\end{eqnarray}

よって問Aの答えは345[kVA]であることが分かる。


各変圧器の負荷分担を求める

問題文に以下の公式の一部が文章として記載されている。公式を忘れていても、本問のように解き方のヒントが書いてある場合があるので見逃さないようにしたい。

変圧器A、B2台を並列運転しているときの負荷分担は、各変圧器の短絡インピーダンス%Zに反比例する。

\begin{eqnarray}
{%ZB’}&=& \frac{SA}{SB} \times{%ZB} \\
SA’&=& \frac{%ZB’}{%ZA+%ZB’}\times{S(※Pでも同じ)} \\
SB’&=& \frac{%ZA}{%ZA+%ZB’}\times{S(※Pでも同じ)} \\
\end{eqnarray}

%ZB’:変圧器Aを基準とした際の、変圧器Bの換算パーセントインピーダンス[%]、

%ZB:変圧器Bのパーセントインピーダンス[%]、

SA:変圧器Aの定格容量[kVA]、SB:変圧器Bの定格容量[kVA]、SA’:変圧器Aの負荷分担容量[kVA]、SB’:変圧器Bの負荷分担容量[kVA]、S:負荷容量[kVA]、P:負荷容量[kW]、

%ZA:変圧器Aのパーセントインピーダンス[%]

変圧器の負荷分担を求めていく。問題文の中に基準容量を300kVAとするとあるので、今回は変圧器B基準で解く。

\begin{eqnarray}
SA’&=& \frac{%ZB}{%ZA’+%ZB}\times{S} \\
&=& \frac{6}{3+6}\times{345} \\
&=& {229.99 ≒ 230[kVA]} \\
SB’&=& \frac{%ZA’}{%ZA’+%ZB}\times{S} \\
&=& \frac{3}{3+6}\times{345} \\
&=& {114.99 ≒ 115[kVA]} \\
\end{eqnarray}

よって問Bの答えは230[kVA]、問Cの答えは115[kVA]であることが分かる。


各変圧器の全損失を求める

定格負荷のα倍の負荷時の負荷損(銅損)の公式

\begin{eqnarray}
Pcα&=& α^2Pc \\
&=& (\frac{Pm}{Pt})^2Pc \\
&=& (\frac{Sm}{St})^2Pc \\
\end{eqnarray}

Pcα:定格負荷のα倍の負荷時の負荷損(銅損)[kW]、α:負荷率、Pc:定格時負荷の負荷損(銅損)[kW]、Pm:負荷の容量[kW]、Pt:変圧器の容量[kW]、Sm:負荷の容量[kVA]、St:変圧器の容量[kVA]

全損失とは、無負荷損(鉄損)と負荷損(銅損)の合計のことである。表より、無負荷損と定格出力時の負荷損が与えられている。

銅損は負荷率αによって変化するので、公式に代入して求める。

鉄損は一定なので、そのまま合計する。

ここで、基準容量は短絡インピーダンスを求めるために、変圧器Aを300kVAに合わせただけなので、実際の容量が300kVAになったわけではない。間違って変圧器容量に代入しないよう注意すること。

\begin{eqnarray}
Pcaα&=& α^2Pca \\
&=& (\frac{230}{500})^2\times{4000} \\
&=& {846.4[W]} \\
Pcaα+Pia&=& 846.4+700 \\
&=& {1546.4 ≒ 1546[W]} \\
\end{eqnarray}

よって問Dの答えは1546[W]であることが分かる。

同様に変圧器Bについても、公式に代入して求め、鉄損と合計する。

\begin{eqnarray}
Pcbα&=& α^2Pcb \\
&=& (\frac{115}{300})^2\times{2500} \\
&=& {367.361[W]} \\
Pcbα+Pib&=& 367.361+400 \\
&=& {767.361 ≒ 767[W]} \\
\end{eqnarray}

よって問Eの答えは767[W]であることが分かる


変圧器単独運転した際の全損失を求める

2)と同様の方法で、変圧器A単独の場合についても銅損を求め合算する。

\begin{eqnarray}
Pcaα’&=& α^2Pca \\
&=& (\frac{344.827}{500})^2\times{4000} \\
&=& {1902.491[W]} \\
Pcaα’+Pia&=& 1902.491+400 \\
&=& {2602.491 ≒ 2602[W]} \\
\end{eqnarray}

よって問Fの答えは2602[W]であることが分かる。

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